中国の刺繍

 

刺繍

刺繍は民間伝統工芸の一つで、中国では2〜3千年の歴史を持っています。特に蘇州の「蘇繍」、広州の「粤繍」、湖南の「湘繍」、四川の「蜀繍」は有名で『中国4大刺繍』といわれています。
主に洋服や寝具、テーブルクロス、カーテンなどの生活用品の中や舞台の装飾になどに用いられたり、また芸術品としても扱われます。

蘇繍

蘇繍

蘇繍は2600年以上の歴史をもっています。宋の時代から成り、明の時代には独特なスタイルになりました。当時の皇室の刺繍はほとんど蘇繍が用いられていました。
緻密な模様と上品な柄で世界的にも有名です。

粤繍

粤繍

粤繍は「広繍」とも言われ、広東省にここ2〜3世紀の内に現われてきました。構図が複雑で、色取りが鮮やかな所が特徴です。
文様には花と鳥、例えば鳳凰、ボタン、松、鶴、サル、シカ、鶏、ガチョウなどがよく用いられています。

湘繍

湘繍

湘繍は湖南省長沙市を中心に作られている刺繍のことです。蘇繍や粤繍の良い部分を取り入れ「湘繍」として新たに出来上がりました。
絹の糸で花の縫い取りをしているので、縫い目が細かくてそろっており、縫い取った花の模様がリアルに表現されています。
主に中国画をモチーフにしており、色彩豊かで色の濃淡がはっきりし、生き生きと描かれています。

蜀繍

蜀繍

四川省成都市を中心とする蜀繍は「川繍」と呼ばれています。
サテンとカラーの絹糸を用い山や川、人物、花と鳥、虫と魚などを刺繍しています。絵柄は生き生きとしており、色取りは鮮やかで、立体感があります。
縫い目は細かく色々な変化に富み、この地方ならではの特徴が出ています。

両面刺繍『紅楼十二金釵』

両面刺繍『紅楼十二金釵』

両面刺繍は裏も表もなく、両面から観賞できる様に刺繍されている中国の伝統工芸品です。
当館に展示されている両面刺繍『紅楼十二金釵』は蘇繍で、高さ2m幅3.2mの一枚のシルク生地に、400色以上の絹糸を使用し、女子名工・5人のチームにより5年の歳月をかけて製作された特別注文品となります。
製作地である中国蘇州でも他に類を見ない大きさで、世界最大級の両面刺繍と言えます。

題材は中国古典小説『紅楼夢』。
主人公十二金釵(娘)の表情や立ち居振る舞い、花木、鳥を繊細に表現することで、みごとに描き出しています。